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巷に雨の降る如く [終章]

 2008-03-31(Mon) クラブの最終日
■冷たい雨が強くなったり弱くなったり。
最終日の午前中は運悪く雨模様。
後味の悪い騎乗になるのが嫌で
「乗りません、道具の後片付けだけに来ました」と言ってしまった。
配馬表には【山桜】
予約してあるそれぞれの方に、縁のある愛馬たちが配馬されている。
クラブからの最後のプレゼントだったのだ。
■振り仰いで空から落ちてくる雨粒を受け止める。
後悔しないようできるだけのことはやった。
それでも心がちぎれるように痛む。
 ー 巷に雨の降る如くわが心にも涙ふる。
■いとおしい馬たちに挨拶をして、道具をすべて車に積み込む。
駐車場を出て障害アリーナをまわり込む道を通る。
2年前に植えた桜のか細い並木に花が咲いている。
ふと見ると、雉が一羽植え込みを歩いている。
「つくばらしいなあ」
このクラブで過ごした日々は、私にとってどんな意味があったんだろう。




競技会応援記 [終章]

 2008-03-30(Sun) 県馬術連盟選手権大会 
■自分の臨終に立ち会うような張りつめた気持ちの馬場の競技会が終わって、今週はもうおまけを楽しむ気分の競技会。
真剣な応援というよりは、ひと時でも仲間と共にいたいという気持ちがすべて。
【よちよち】ジャンピングチームは、いつもの対外競技メンバー+初出場(記念出場とも言う)組で、エントリー数も多め。
■県の競技会だから、何度も応援にくると見知った顔が多くなる。
次の乗馬クラブを探さなければならない私達は、当然のごとく他のクラブの人馬に目がいく。
おもわず目を覆いたくなるような醜い姿、罵声を見聞きすると「あそこだけは絶対に行きたくない」という気持ちが強くなる。
競技会はクラブの品評会なのだ。
反面,うっとりするような綺麗な騎乗姿勢、滑らかで無理のない走行を目にすると
「ああ素敵だなあ、あのクラブっていいなあ」と素直にあこがれてしまう。
しかし、思うことは皆同じ。
周囲が「あの先生のクラブっていいよね」「今度乗りに行こうと思っている」という話で盛り上がり出すと、ちょっと微妙な気分。
おばさんが集団で行動するのは醜い。
この煮詰まった人間関係そのままを新しいクラブに持ち込むのは危険じゃないのか。
なんて、余分なことを考えながら観戦する。
■【時鮭】は、今回もレンガ柄と格子柄の障害を拒否していた。
4%先生が押しても懲戒しても「絶対イヤだもん」とビタ止まり。
普段の練習では使っていない柄を正確に判別するのは、ある意味えらい。
「エントリーの走行を馴致と思って何度も見せてあげなきゃね」という達観した姿勢で臨む。
そして、4、5回の走行を犠牲にしてようやく減点ゼロで帰ってくる。
よかった、物見して跳ばない馬の烙印を押されずにすんだ。
「拒否されるかも」という不安をはねのけて見事に優勝したTKさんは、すばらしい。
【霧丸】さまは、いつもの期待に応えて安定走行。
【エウリディケ】も無事帰還でなにより。
ビギナー競技ではあるが1,2,3位をわがクラブが独占するなど、最後の輝きを残して花道を飾れた。

■いつもなら、そそくさと帰るところだが、
立ち去り難い気持ちでクラブの撤収片付けまで居残る。
「何をお手伝いしていいかわからないんですけれど…」という付き添いの家族の方と共に作業を見守る。
荷物を積み終え馬運車を出す段になって皆が4%先生を囲む。
「せっかくここまで来たのだから、乗馬を続けて下さいね」
うつむき加減で短いスピーチ。
涙ぐむ人もちらほら。

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馬運車が会場を離れていく。
『さよなら【よちよち】乗馬クラブ』
感無量。


■そうそう、うっしーさんNGさんHNさんに聞きたいことがまだ残っていたんです。
「競技に出なくても、競技会の応援にいつもいらっしゃるのはどうして?」
普通の感覚では、交通費をかけて休日をつぶして応援にいくのは、それなりの理由があるはず。
近く自分が競技にでるから予習のつもりとか、どうしても応援したい人馬がいるとか…
いつも会場でお会いするのに、それらしい理由の見当がつかなくて。
もっと馬談義したかったなあ、なんて終わってから名残惜しく感じております。
思い残すことはないなんていいながら、まだまだ現世に未練を残す幽霊の気分です。

675鞍目 自由になる [終章]

 2008-03-29(Sat) 初級クラス 通算675鞍目
■「今日が最後になります」とご挨拶される方が目立つ。
明日は競技会(障害)の遠征でクラブ自体が休みになるので、サンデーライダーの方々は最終回となる。
慣れ親しんだ方と会えなくなるのは寂しい。
■本日のお相手も【アウグスティヌス】
好きな馬に乗れるのはしあわせである。
「もちぇさん、ちょっと乗っておきますね」と4%先生から声がかかる。
最近の【アウグス】は何かを主張したいらしくて、部班レッスン中に不穏な行動をとることがあるらしい。
■レッスンは【青雲】【エウリディケ】【毒うま】と中級との合同レッスン。
部班の先頭で快調に動いていたのだが…
準備運動の駈歩でアウグスが急に進路を変えて横に飛び出して行く。
「やってくれますね〜」「後続の方々、ご迷惑をかけて申しわけありません」
落ちる気はしないし、駈歩で左右に倒れかかってくる馬も経験したので騎乗するには問題ないのだが、
【アウグス】がこんな行動をとる原因がはっきりしないのが、気持ち悪い。
彼に数多く乗っている方も「おもしろい馬よね、他に馬がいるときに限って突然何かをはじめるんだから」とおっしゃる。
■急に脱線するときの彼は、馬体の前と後ろがポキリと折れたようになってつながらなくなる。
推進のアクセルを踏みながら手綱のブレーキをかけつつ運動している時は、後ろから前までがエネルギーの流れ的にひとまとまりになっているのと好対照。
2回ほどあらぬ方向に走り出し尻跳ねもしてくれたが、その後は落ち着く。
4%先生のご配慮で常歩で内方姿勢をとるエクセサイズを時間をかけて行う。
前に出して手綱で受け止める、内方向いたら拳を緩めるなどの会話をしていくうちに、またひとつの枠のなかに収まる。
ふう〜、何が気に入らないだろうねえ。
■その後の速歩の運動は気持ちよく進む。
「外側の薬指に馬の重さが感じられるように」「外側で規制して回転させる」というのが実感できる。
外と内は相対的なものだから、外の肘が起点になっていれば内側を緩めれば外側の規制が効く。
内側をあれこれ操作していれば,安定した外側に馬は頼ってくる。
自然に馬の重みが外側の拳にかかってくる。
重くなり過ぎたら、脚を使って首をあげさせるとか、隅角を利用して再度内方姿勢を取らせるなどですうと楽になる。
こんなときの馬の動きは、一定の気持ちいいリズムにのって柔らかく軽快なのだ。
それゆえ、乗っている人も何の苦労もなくひとつ所に落ち着いて座っていられる。
正しい騎乗姿勢って、馬が気持ちよく動いていないとできない姿勢だと思う。
■私が何かをやった結果、馬がそれに応じて動いてくれるのが感じられる。
「身体の各部分が自由に動いて,柔らかくリラックスして乗れるようになりましたね」
「昔なら、駈歩で馬があんな風になったら大変なことになっていましたよね」と
4%先生が声をかけて下さる。
■ここで手に入れたものは、馬の上での解き放たれた感覚。
私は自由になれたという確信なのだ。




673/674鞍目 ブレーキをかけながらアクセル [終章]

 2008-03-28(Fri) 初級クラス 通算673/674鞍目
■ストレスフルな仕事からようやく解放されて乗馬クラブへ。
ひさしぶりに4%先生のお顔をみる。
「(日曜日は)お疲れさまでした、すばらしかったですよ」と笑顔で言われる。
ひょえ〜、〈よかった〉ではなく〈すばらしい〉という表現は初めて聞く。
すべては4%先生の采配のお陰なのだ。
ありがたし。
■閉鎖が決まって心底落ち込んでいた時に、
この最後の舞台があったからこそ強い気持ちを保つことができた。
仕事のプレッシャーを押し返しつつ普段より多い騎乗数をこなす凄まじい日々。
ゼロから始めた乗馬で、競技会で満足のいく結果を出せるところまで来たのだ。
この先、馬に乗らなくなったとしても「乗馬をしていました」と他の人に胸をはって言える。
駈歩が怖いままのへっぴり腰騎乗で、仕事の忙しさに負けて遠ざかっていたら、中途半端で後味が悪かったろう。
区切りをつけることができ、もう思い残すことはない。
あとは思い出の整理だけ。

■自分はもう〈あの世に旅立った人〉の気分でレッスンの予約をとる。
ひと鞍目は【アレフ・ゼロ】
ふた鞍目は【アウグスティヌス】
4%先生のレッスン。
かつてのように、先生の一言一句、馬の挙動のひとつひとつに集中することをしなくなった。
「ああ、春の空の下で気持ちよく馬に乗れるなんてしあわせ」と幸福の瞬間を味わうのみ。
■そんな中でも、耳に残ったのは、
「長蹄跡から巻き乗りしましょう」
「巻き乗りの出口で駈歩をだしましょう」
「駈歩発進は,巻き乗りの内方姿勢をそのまま保って出すんですよ」という説明の声。
そして、
「馬を前に出して」
「前に出たものを手綱で受け止めて」
「例えば、20km/hr が出るようにアクセルを踏んで2km/hr 分のブレーキをかけて、18km/hr で走るつもりで」
「手綱に手応えがないというのは良くないことです」という説明。
手綱を軽く握ることが多い私には、手応えがないのはダメというひと言に「えっ、そうなの」と軽い驚き。
まったくの手応えなしというのは乗っていて怖いので、もちろんわかるのだが、
前に出るパワーの1割は手綱を持っていいというのは思った以上に強い手応えになる。
「手綱をもって止まりそうになったら『違うんだよ止まれじゃないよ』と教えてあげればいいですから」
なるほどねえ。
重い馬ばかり乗っているとわかりにくいところだが、
【アウグス】のような前進気勢のある馬に乗ると納得できる。
前で受け止めるようになると、馬のパワーを貯められるようになるのだ。
■「馬が常に脚に反応している状態にしておいて」とも言われる。
騎乗バランスが整ってノイズの少ない状態で扶助を送り、馬の反応に即座に応えてプレッシャーとリリースを使い分けられようにならないとなかなか理想の状態にはならない。
でも、それを当然のようにレッスンで求められるようになってきているのだ。
もう最後が見えているけれど、さらに新しい課題、さらに一歩前へと。


672鞍目 乗れるだけで幸せ [終章]

 2008-03-24(Mon) 初級クラス 通算672鞍目
■朝一番のクラス。
小雨が降っていたので集まった会員同士「どうします? 乗りますか?」と思案顔。
「もう乗れなくなると思うと…」のひと言で馬装がはじまる。
私のお相手は【アレフゼロ】
ひさしぶりに拍車なしで乗ってみる。
動いてはくれたけれど重い。
普段、ガシガシ拍車を使っているつもりはなかったが、
必要な時に馬がわかる強さの合図を送るには丸腰では無理なのかも。
■「昨日の競技会のあとでは疲れたんじゃないですか〜」とごんちゃん先生にねぎらってもらう。
今や乗れないときの方が、いたたまれずに疲れてしまうのだ。
馬といられるだけで幸せ。

卒業公演としての競技会 謝辞編 [終章]

 2008-03-23(Sun) 2007年度 県馬術連盟選手権大会

  もちぇ@【山桜】  待機馬場にて
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 馬場馬術競技第2課目2004  成績 : 56.17%

一年前のデビュー戦の成績が 50.59% だったので、5.58ポイント上回った。
(得点の合計では19点増えたことになる)
しかも2008年の密かな目標とした55%を越えたのでもう何も言うことはない。
きわめて満足な結果になった。

「この馬の歩様では点数はでない」と一部でささやかれていたけれど、今回主審の評価では59.41%がついていたので、やればできる馬なんだと思う。
「腰が入る」「腰が振れる」など副審のコメントに散見される馬のぐにゃりとした姿勢を騎乗者がカバーできれば、【山桜】はもっと輝かしい成績をおさめられるに違いない。



   :〜:〜:〜: Acknowledgments :〜:〜:〜:

今回の競技会出場にあたり、数々の人にお世話になりました。
自分ひとりでは何もできない、多くの人の助けがなければ成り立たないスポーツであることを改めて感じます。

チーム【山桜】:今回馬場デビューのHGさん、昨年も一緒に出場したHNさん、バルちゃんのお母さん、かめとうまさん、Aチーム隊長。
チーム【とら】:ジュニアで頑張るKMさん、スタッフのごとく働いてくださるTKさん。
チーム【青雲】:素敵なシルバーグレイのSMさん、たてがみ編みで今回もお世話になったベテランのレイチェルママ、雲の上の存在YSさん。
最愛の馬【アエラス】と参加されたNK夫人。NKご夫妻にはいつも気にかけていただき励みになりました。

応援に来て下さった方も数多くいました。
馬付き総務として絶大なる信頼を得るHRさん、うっし〜ご夫妻、いつもなごやかなNGさん、元馬術部監督O先生、馬に乗り始めて間もないのに4%先生の助手にすんなりおさまったHRくん、救護係として見守って下さったKさん。
乗馬の大先輩で何かにつけての相談相手だったYMさん。
そして、2課目競技初回のヘボヘボ経路から見つめ続けてくださったちゃりさん、「上手くなりましたね」のひと言は私にとって誰の言葉より価値あるものとなりました。

われら遠征隊を送り出し、残るものたちを守り、帰りを待っていてくれたクラブスタッフのみなさま。
競技会準備が優先されたレッスンを黙って受け入れてくれた会員のみなさま。

競技会をスムースに運営し、私達に最後の舞台を与えくれた県馬術連盟競技役員のみなさま。
朝、落鉄していた【山桜】の蹄鉄を手当てして下さった装蹄師のFさん。

最後に、すべての作業を監督し自ら率先し働き十数人におよぶ大世帯を混乱なく率いるリーダーであり、馬たちのトレーナーであり、わが師である4%先生。
そして、私をのせてくれた馬たち。

心から感謝いたします。

ありがとうございました。
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卒業公演としての競技会 競技編 [終章]

 2008-03-23(Sun) 2007年度 県馬術連盟選手権大会 馬場馬術競技第2課目2004
■チーム【山桜】は私が一番手。
今回はクラブから応援の仲間が多くかけつけて、
馬付きや進行係などそれぞれを引き受けて下さる。
だから私は何の心配もなく4%先生の下乗りを馬場の外から眺める。
準備馬場は、エンジン全開の馬たちでにぎやか。
■「2課目はB馬場よ」と聞いて驚く。
「去年と違う場所なの?」
B馬場は、本来の馬場馬術用のアリーナで、馬場埒で囲まれその周囲は芝地と林と落ち着いた雰囲気。
「ここでやるとは思わなかった」
「この馬場で経路を踏むイメトレしておかなくては…」
標記を見て運動するというより周囲の景色を見て位置の判断をしているから、見慣れぬ場所は人にも馴致がいるのだ。
運良く4%先生がオープン参加で一度経路を回って下さることになっている。
先生の姿を自分に置換えて見つめる。
うん、大丈夫。
■いよいよ【山桜】に騎乗する。
彼はちょっと息が弾んでいて、わずかな扶助でトンと前に出ていく。
常歩でしっかり歩いてもらいながら、手綱のコンタクトをとっていく。
すごい ! 手綱ピッチマーク3番目が最初から常に拳の中にあって、どのように運動しても動くことがない。
まずは馬の息を整えて、クリアで平静だが覚醒度の高い状態を維持できるよう、馬の動きに合わせて大きな一歩で常歩を続けてもらう。
「そう、そう、それでいい」と彼に語りかける。
■「じゃあ、もちぇさんここで輪乗りしましょう,軽速歩で」と馬場の中に入ってきて4%先生が声をかける。
ええ? 人馬の直前チューニングまでやっていただけるんですか?
準備馬場はひとりで各個乗りに挑むつもりでいただけに、先生の声に驚く。
ここまで至れり尽くせりだとかえって過保護かな?なんて思いもかすめる。
軽速歩すると鐙が吸い付くような感じ。
「なんて乗りやすいんだろう」「これは私の鞍だったかしら?」
いやいや、もう分析なんてくそくらえだ。
ああ、新鮮な春の朝に、こんなに気持ちよく馬に乗れるなんて。
それだけで充分。
そして、回りがよく見える。
インストラクターから会員に乗り替わったとたん進路が不安定になった馬とか。
「あの人はあまり上手じゃないから、こちらから避けてあげなくちゃ」
「あの馬が過ぎてから駈歩出した方が安全そう」とか。
つい周囲を優先させてしまうのはいつものことだか、怖くて動けないというのでない。
「もちぇさん、預かったカメラが上手く動かないんだけど」と馬場の外から呼ばれる。
「あーはい、はい」と馬を近づけてカメラを点検してしまう。
視野の外で、4%先生が「準備馬場でそんなことやっている場合なんですかねえ」とやきもきしている波動が伝わってくる。
『センタードライディング』では〈ソフトフォーカス〉を乗馬の基本にとりあげているが、まさにそんなかんじ。
視野が極端に広くて、どこで何をやっているのかなんとなくわかってしまうのだ。

■いよいよ待機馬場にコールされる。
「輪乗りの軽速歩でリズムよく元気よく」
ベルが鳴らされて、大会運営の高校生がA点の馬場埒を開けてくれる。
「お世話になります」なんて高校生君にお礼をいうゆとりもあって、
いざ入場。

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■演技は、さらさらと流れて行くように進んだ。
思うように前に出て,思うように曲がり,思うように移行してくれる。
左手前の駈歩に乗っている時に,ぽつっと風に涙が飛ばされて行ったのを感じた。
「あれ涙、なんで?どうした私?」と自分の中を探っているうちに、
駈歩からの下方移行、常歩で短蹄跡を歩いていると押し寄せてくるものがある。
速歩にしたとたん、
「ああ【山桜】、【山桜】、君に乗るのはこれが最後なんだね」と胸中に言葉となってあふれ出てくる。
半巻き乗りで中央線、主審が起立して迎えてくれるところをG点で停止敬礼。
後ろから拍手の音が聞こえてくる。
【山桜】の首筋をやさしくなでて、向きをかえて帰る道すがら、泣きそうになった。
すべてが終わった…

■【山桜】は2番手の選手が騎乗するので、あっという間にわが手を離れて行った。
その後のことは、なんだかぼーと過ぎてしまってよく思い出せないのだ。
チーム【山桜】全員で記念写真をとろうなんてカメラを構えてみたり、あちこち元気よく動いていたはずなのに。


卒業公演としての競技会 早朝編 [終章]

2008-03-23(Sun) 2007年度 県馬術連盟選手権大会  馬場馬術競技第2課目2004

■1月の終わり頃に「次の競技会をどうしますか?」と4%先生に聞かれた。
「そうでした… この県大会に【山桜】で出たのが去年の3月」
「この一年の成果を問うてみたいと思います」と私は答えた。
■他人に評価され、衆目に晒されて初めてわかる自分の課題。
騎乗姿勢がなってない、
各個乗りが怖くてできない、
馬の前進気勢がつくれない、
歩度の詰め伸ばしができない etc.
なんとかしなくてはと格闘してきた。
その成果をもう一度同じ馬,同じ大会で評価してもらいたいと考えた。
■ところが、2月に入って突然のクラブの閉鎖決定。
競技会に出ることすらかなわぬこととあきらめたが、
「行きましょう」のひと言で、クラブの最後を飾る舞台となった。
通過点ではなくゴール。
まさに【よちよち乗馬クラブ】卒業にあたって、ゼロからのスタートでどこまで成長したのかを見てもらう機会になってしまった。

■23日早朝。
去年と同じように4時起き。
いつもはしない化粧をしピアスもつけて万全の身支度を済ませる。
5時には家を出て、高速道路を120km/hr で飛ばす。
ちょうど少しかけた満月が淡く光って西の空にかかっている。
薄いブルーの静かな空がだんだん活気を帯びてくる。
と、ちょうど運転席の真横から太陽が顔を出して最初の輝きを届けてくれる。
「いい予感だわ、月と太陽の両方を拝めるなんて」
■会場の厩舎群につくと、前日から来ていた馬たちは朝飼いをもらっていた。
おお、馬場で調馬索運動をしている馬もいる。
うっすら残る朝もやをついて朝陽が射してくる。
まだ、人や馬も少ないから落ち着いている雰囲気。
私の役割は【山桜】のたてがみを編むこと。
飼い桶に首を突っ込んでいるので、そのままの姿勢で首すじがいい位置に来ている。
「おはよう三つ編みさせてね」と挨拶すると
「僕は食べているから,そっちで勝手にやっていいよ」と【山桜】がつぶやく。
「もぐもぐ、ゴロゴロ、もぐもぐ」「ぶふっ」と飼いを食む音だけが響くなか、毛束にしたたてがみを編んでいく。
編み上がる頃には、会場に到着した馬や人でにぎやかになってくる。
「ブヒヒーン」「カツ、カツ、カツ、カツ」と鳴き声足音が緊張感を漂わせている。
「おはようございます」
チーム【山桜】の面々がそろい始める。
我が馬たちものんびりした雰囲気から、顔を上げフレーメンをしたり耳をピクピク動かしたりとモードが切り替わり始める。
「今日の進行表でーす」と競技会メンバーの中心を担うかたが、作業の進行と予定時間、担当者の名前を書いた紙を張り出してくれる。
ううむ、誰が何をすればよいかわかって非常に頼もしい。
馬の身支度が完了すれば,馬装や運動に連れて行くのは他のメンバーがやってくれる。
私は安心して自分の身支度にかかれる。
長靴を履きアスコットタイを締めジャケットを羽織る。
ハットも白手袋もすべて身に付ける。
最後に手鏡で確認して,ピンクの口紅を引く。
(卒業公演なのだから抜かりは禁物)
去年の戸惑いとは大きな違いだ。
落ち着いてゆうゆうとした気分で馬場に向う。


670/671鞍目 つかの間の楽園にて [終章]

 2008-03-22(Sat) 初級クラス 通算670/671鞍目
■朝日がまぶしい。
春分を過ぎたから、光は力強く空気は浮き立つようだ。
木立からはウグイスの声も聞こえてきて「ああいい日だ〜」と大きく息をつく。
■本日ひと鞍目は【アレフ・ゼロ】
競技会前最終調整用のレッスンなので、6人中5人が出場者。
【青雲】【毒うま】【ベルベット・シート】【山桜】【チャンドラ・グプタ】の6騎合同レッスン。
準備運動のあと、それぞれの課目の急所のおさらい。
■【アレフ】は今日も元気。
軽速歩では【時鮭】とか【アウグス】に匹敵するくらい気持ちよく前に出てくれる。
これは【アレフ】のメインエンジンが燃焼している証拠。
準備運動のなかほどでややエンジンの回転数が落ちたけれど、それでも部班にはついていける。
■他の人馬が練習をしている時は、邪魔をしないように馬場のまん中で止まって見学している。
これまでなら、一旦止まった【アレフ】を再起動させるためにはひどく苦労していた。
あるいはエンジンが凍りつかないようずっと軽速歩を続けるなど工夫がいった。
それが、止まったまま5分以上おいてから動かしても、「はいよっ」と軽々動き出して素晴らしい速歩駈歩になるのだ。
不思議…
もともと【アレフ】の元気がいいというのもあるのだろうが、
待機している時から馬と息をあわせて(馬の声に耳を傾けて)いると扶助に即応してくれる時が多いように感じる。
次が出番だからといきなり鞭や拍車で強い合図を出して馬をあおり立てるような扶助だと、馬だって嫌気がさすのかも。
待機馬場で元気よく馬エンジンの回転数を上げるというのは、人が「いくぞ!」と強い扶助で煽って回転数を上げるのではなくて、馬がその人の扶助に耳を傾けた結果、「じゃあ元気よく行こう」と馬自身がやる気になることなのかもしれない。
待機馬場の常歩や停止などの静かな落ち着いた動きの中で、馬と緊密にコニュミケーションをとったほうが、そのあとの馬の動きはずっと良くなるらしい、と思わせる経験を【とら】や最近の【アレフ】にさせてもらっている。
■パート練習は駈歩での斜めに手前を換えで中点で速歩に移行,蹄跡に前肢が入る所で常歩に下方移行の練習。
【アレフ】は力強く駈歩をしてくれる。
ゆえに、駈歩が速歩になかなか落ちない。
座骨のリズムだけで駈歩から速歩にストンと落ちるはずの馬なのに〜 この元気さはいったいどうしたのだろう。

■そして、ふた鞍目。
【山桜】は1、2時間目のレッスンに配馬されている。
土日の午前中は3時間目まであるが、その時間には出てこない。
【山桜】で競技会エントリーをしている人は何人もいるが、すべての人が彼で直前レッスンをするわけにはいかないらしい。
(多分、明日の早い時間に出場する人が優先されているだと思う)
午前のレッスンが終わり次第、競技馬輸送のスケジュールになっているのだ。
そして2時間目のご指名に与ったのが、なんと私!
これは、レッスン後の手入れをかねて競技会用の馬の準備をやらせてもらえるかも…
朝昼ナイターと出番が多い【山桜】は暖かい日中に体を洗ってやることができなかったのだ。
せめて尻尾だけでもと昨夕は一部洗ったが、レッスンの合間を縫って身体を冷やさないようにと手入れをするのでは、本格的に綺麗にしてあげることができない。
かなり気になっていたのだった。
■「もちぇさん、【山桜】の準備お願いしますね」
ごんちゃん先生から声をかけられた。
やった〜! ありがたい、今日は18℃近くまで気温が上がる予報。
暖かくて陽射したっぷりの馬洗い日和。
天の恵み、先生方のお情けだ。うれしい!
レッスン後にのんびりやっていたら、馬が休める時間が少なくなる。
輸送の時間が迫っているので、馬房で一息いれられるようにするには超特急で手入れをしなければ。
「命をかけて、お手入れいたします!」
■日当たりの良い馬繋場を選んで、たてがみ以外の全身をシャンプーする。
これで気になっていたフケも股の間の汚れも落ちる。
【山桜】の水気をタオルでよーく拭き取って、天日に当てる。
毛が乾くまでの時間は、たてがみをよくブラッシングして、三つ編み用の毛束に分けておく。
こうしておけば、明朝の三つ編みがかなり楽になるはず。
手早くやってもここまで30分以上かかる。
乾いた馬体に仕上げのブラシをかけて、なんとか終了。
馬房に帰るまでの短い距離をお散歩する。
ふう〜、春だなあ。
あきらめていたけれど、こんな馬洗い日和に愛馬【山桜】とひとときを過ごすことができてよかった。
まさに〈楽園にて〉という想い。
その後、2時間もしないうちに鞍や馬具を積み込み、輸送用プロテクターをつけた馬たちも乗り込んで、わがクラブの馬運車は競技会場に向けて出発をした。
「気をつけて」「いってらっしゃい」「明日また会えるからね」
手を振って送り出す。
なんだかお別れのような気持ちになってしまうじゃないの。
違う,違う。
明日が最後の晴れ舞台なのだから。

■もちろんふた鞍目のレッスンは行われた。
私が【山桜】
【とら】と【アウグスティヌス】【エウリディケ】【ムーン】の5騎合同レッスン。
経路を通しでやったのは【とら】だけで、軽めの運動になる。
部班で2課目の速歩パートの練習をした。
最終リハーサルの課題、〈【山桜】エンジンの回転数を上げる〉のは無事に達成。
特に何をしたわけでもないが,ちゃんと動いてくれる。
不思議である。
上下動が大きくなる伸ばした速歩で、鞍からずり落ちないようにするのが次なる課題。
反撞を吸収しようと骨盤を寝かせて後傾してしまうのは格好悪いので、座骨でうさぎ跳びをしている感覚で馬と一緒に動くように心がける。
すると、後ろに倒れないよう手綱にぶらさがることがなくなるので、前を楽にしてあげられる。
さらに駈歩が前に出なくなるとどうしても人の身体が前屈みになるので、これも注意しなければ。
常歩では人が馬の後ろからついて行くようにするだけで、馬がすうと前にでるのを体感しているので、駈歩でも同じような原理なのだと頭では理解しているのだが。
なかなか身体が納得してくれないのだ。
と、乗れば乗るほど課題は出てくるものの、うまくいかないという焦りはない。
「ああ楽だ」「ああ気持ちのいい走りだ」と思える一瞬にすべてが報われている。
4%先生がレッスンの最後に「今日の【山桜】は良いですね」とひと言。
そう、チーム【山桜】すべての人のおかげ。
ありがたし。



668/669鞍目 [終章]

 2008-03-21(Fri) 初級クラス 通算668/669鞍目
■昨日は冷たい雨。
乗るのを断念してしまった。
馬に乗らない日は空虚。
何もできずに、ぶらぶらいらいらして過ごしてしまう。

■ひと鞍目は【ベルベット・シート】
【とら】と【山桜】との中級合同レッスン。
4%先生が見て下さる。
■それぞれの課目のパート練習になる。
【とら】が曲がりきれず待機中の馬群に飛び込んできた。
というわけで、低い埒の外で待機する。
馬場の外で審判席にあたる位置。
【ベル】を馬場にまっすぐ向けて「いっしょに審判役をやろう」と声をかける。
■私の練習は、斜めに手前を換えて駈歩から移行した速歩をよれずにまっすぐ進めること。
ちょっと、右手前が内側に入ってしまうが、斜線をまっすぐに進める分にはあまり問題視しない。
最後は、速歩で半巻き中央線に入りG点で停止の練習。
「そう、それだけ元気な速歩がいいですよ」と言われるくらい、前にでてくれる速歩。
なんだか、いい子の【ベル】
このところ、どの馬もしっかり動いてくれるので楽しい。

■昼食をはさんで,午後のふた鞍目。
【山桜】に乗せてもらって、【青雲】【チャンドラ・グプタ】【アウグスティヌス】の合同レッスン。
■準備運動のあと、それぞれのパート練習。
【山桜】の課題は、前進気勢を作ること。
前回、これでいいかなと思った水準よりさらに10%増しの扶助にする。
あわわ、斜めに手前を換えた斜線や長蹄跡の歩度を伸ばした速歩に座っていられない。
身体が左右にずり落ちそうになる。
ただ、上下動に耐えて乗っているのでは対応しきれない。
まずい、歩度が伸びたときの乗り方について考えていなかった。
しかし駈歩の長蹄跡の最初で一歩内側に一歩入ってしまう難点は、
外方手綱をしっかり持って内方脚に力を込めれば問題なく直進してくれる。
やはり、漫然とした扶助ではなく、どのラインをどうやって通るのか人がきちんと扶助を通して馬に伝えなければならないのだ。
最後の停止は、
「直線を向いたら主審の顔を見つめるつもりで」
「停止の準備をして、停止させるときは審判の1m上を見るつもりで顔を上げて」と注文がつく。
いつもG点を探して馬場を眺めてしまう癖があり、「止まれ」の時には馬の首のあたりをグッと見つめてしまう。
上をむいたら馬が止まらないような気がしてしまうのだ。
動きに合わせた呼吸とか視線などは、関係ないように見えて多いに関係していると思う。
馬の邪魔をしていない自然な流れ、「ふっ」とか「すう」とか「とん」とかで表現される動きが理想なのだ。
■ひととり経路を回ったあとは、【山桜】でエントリーしている他のメンバーと乗り替わって【グプタ】を連れて帰る。
チーム【山桜】は今回一番メンバーが多い。
それだけ彼が,頑張っているわけなのだ。
競技会に出る時は「【山桜】がいるから大丈夫」といわれるようになったこの一年。
かつて、対向してくる馬が恐くて横っ飛びしたり暴走していた馬とは思えない。
ほんとうに驚くべき成長だ。

続きは夕食のあとで

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